肩の痛み

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肩の痛みの原因は?

肩の痛みの原因は?

一般的に「肩が痛い」と感じる場合、大きく二つのタイプに分けられます。一つは、腕の付け根の前側にある肩関節の痛み、もう一つは肩甲骨の上あたりで「肩こり」が起こる部位の痛みです。どちらも高齢の方に多く、明確な原因やきっかけが思い当たらないこともあります。

肩の痛みの原因となる疾患

  • 五十肩(肩関節周囲炎)
  • 肩腱板損傷
  • 翼状肩甲
  • 肩腱板断裂
  • 石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)
  • 腕神経叢損傷
  • 胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)
  • 反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)

肩の痛みの治療について

肩の痛みは、関節の異常、筋肉や靭帯の損傷、加齢に伴う機能低下などさまざまな原因によって引き起こされます。そのため、治療は患者さんの症状や生活環境に応じた包括的なアプローチが必要です。

保存療法(手術を伴わない治療)

軽度から中等度の症状に対しては、まず保存療法が選択されます。治療を組み合わせ、痛みの軽減と機能の回復を目指す。特に、早期の適切なリハビリテーションが重要とされています。

安静と生活指導

痛みの原因となる動作を避け、適切な姿勢を保つようにしましょう。

薬物療法

消炎鎮痛剤や筋弛緩剤を用い、炎症や痛みを抑えます。

物理療法

温熱療法、干渉波、超音波治療、牽引療法などで血流を促し、痛みを和らげます。

リハビリテーション

運動療法をおこない、筋力の維持・強化、関節可動域の改善を図ります。

注射治療

ステロイド注射やヒアルロン酸注射がおこなわれることもあります。

手術療法(外科的治療)

保存療法で十分な改善が見られない場合、または構造的な問題がある場合には手術が検討されます。関節鏡手術などの低侵襲手術が主流となり、手術後も適切なリハビリテーションをおこなうことでスムーズな回復が見込めます。

関節鏡手術

小さな切開で損傷部位を修復する手術で、回復が早いのが特徴です。

腱板修復術

腱板断裂による痛みに対し、断裂した組織を縫合します。

人工関節置換術

関節の変形が重度の場合、人工関節に置き換えることで痛みを軽減し機能を改善します。

早期治療と適切な治療が重要です

肩の痛みは放置すると慢性化し、日常生活に支障をきたすため、早期の診断と適切な治療が大切です。特に、リハビリテーションは単なる機能回復訓練ではなく、患者さんご自身が積極的に参加しながら生活の質(QOL)の向上を目指すものである。当クリニックでは、リハビリテーション専門医の指導のもと、多職種が連携し、患者さんお一人ひとりに最適な治療プログラムをご提供させていただきます。
「痛みがあるけれど、放っておいてもよいのか…」と悩んでいる方は、早めに当クリニックまでご相談ください。

五十肩(肩関節周囲炎)

40~50歳代以降に多く見られる疾患で、上腕二頭筋の長頭腱の炎症から始まります。痛みによって腕を動かさなくなることで関節の袋(関節包)に癒着が起こり、徐々に動きが制限される状態となります。

診断

  • MRIなどの検査でも構造的な異常は見られない
  • 問診による年齢や発症経過の確認
  • 関節可動域の評価

症状

  • 特定の角度から痛みが強くなり、
    それ以上腕が上がらなくなる
  • 徐々に肩関節の動きが制限される
  • 夜間痛を伴うことがある
  • 進行すると関節の可動域がさらに狭くなる

肩腱板損傷

肩関節を包む4つの腱(腱板)のうち、特に上方の棘上筋腱が切れる状態です。外傷による急性の損傷と、加齢や繰り返しの負担による慢性の損傷があります。

診断

  • MRIによる腱の状態確認
  • 特徴的な痛みのパターンの評価
  • 肩関節の機能検査

症状

  • 腕を上げる途中で最も痛む(通過痛)
  • 腕を下ろす時も同様の痛みがある
  • 物を取ろうとした時の急な痛み
  • 痛みのない場合もある

翼状肩甲

前鋸筋の麻痺により、肩甲骨の内側縁が浮き上がって見える状態です。スポーツ動作や特定の姿勢による長胸神経への負担が主な原因となります。

診断

  • 肩甲骨の動きの視診
  • 壁押しテストでの評価
  • 神経学的検査
  • 他の筋麻痺との鑑別

症状

  • 腕を挙上すると肩甲骨が翼のように浮き上がる
  • 腕を前方に挙げにくい
  • 特定のスポーツ動作後に発症することが多い
  • 重いリュックを背負った後に生じることもある

肩腱板断裂

40歳以上の中年期以降に多く見られ、特に60代の男性、右肩に好発します。腱板が骨(肩峰と上腕骨頭)にはさまれる解剖学的特徴と腱板の老化が背景にあります。外傷性と非外傷性があり、若年者では投球動作による不全断裂もみられます。

診断

  • 診察での肩の挙上能力確認
  • 関節の拘縮の有無
  • 肩峰下での軋轢音の確認
  • 棘下筋萎縮の有無
  • X線での肩峰と骨頭間の狭小化確認
  • MRIでの腱板断裂の評価

症状

  • 肩の運動障害と運動痛
  • 夜間痛(最も多い受診理由)
  • 挙上時の脱力感
  • 肩の前上面での軋轢音
  • 五十肩と異なり拘縮が少ない

石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)

40~50歳代の女性に多い疾患で、肩腱板内にリン酸カルシウム結晶が沈着することで急性の炎症が生じます。石灰は時間とともにミルク状から石膏状へと変化し、腱板から滑液包内に破れ出る際に激痛を引き起こします。

診断

  • 圧痛部位と可動域の確認
  • X線での石灰沈着の確認
  • CT検査や超音波検査による石灰の評価
  • MRIでの腱板断裂合併の確認

症状

急性型
  • 夜間突然の激しい肩の痛み
  • 痛みで眠れない
  • 関節をほとんど動かせない
  • 症状は1~4週間続く
亜急性型
  • 中程度の痛みが持続
  • 肩の動きが制限される
  • 症状は1~6ヶ月程度続く
慢性型
  • 運動時の痛み
  • 症状は比較的軽いが6ヶ月以上持続
  • 動作により痛みが出現

腕神経叢損傷

腕の神経を形成する腕神経叢(第5頚神経から第1胸神経)が損傷される疾患です。オートバイ事故、スポーツでの転倒、機械への巻き込まれなどの外傷や、分娩時の損傷(分娩麻痺)で発生します。損傷の程度や部位により症状は大きく異なります。

診断

  • 詳細な神経学的検査
  • X線での鎖骨骨折や肩関節の状態確認
  • MRIでの神経損傷状態の評価
  • 電気生理学的検査による損傷レベルの特定
  • 合併症(動脈損傷など)の確認

症状

損傷部位により3つのタイプに分かれます。

上位型
  • 肩が挙がらない
  • 肘が曲がらない
  • 上腕から前腕外側の感覚障害
下位型
  • 手首や指が動かない
  • 手の筋肉の麻痺
  • 前腕から手の内側の感覚障害
全型
  • 腕全体の運動・感覚障害
  • 眼症状(ホルネル徴候)を伴うことがある
  • 最も重症なタイプ

胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)

首から腕に伸びる神経や血管が圧迫されることで発症する疾患。なで肩の女性や重い荷物を持つ人に多く、腕のしびれや痛み、握力低下などがみられる。血流障害を伴う場合、腕の色の変化も起こります。

診断

  • 徒手検査(アドソンテスト、ライトテスト、ルーステスト、エデンテスト)で神経や血管の圧迫を確認
  • レントゲンで頚肋の有無や鎖骨・肋骨の間隙を評価
  • 類似疾患の除外(頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症、肘部管症候群など)

症状

  • 腕を挙げると肩・腕・肩甲骨周囲に痛みやしびれが生じる
  • 小指側の感覚異常や握力低下、細かい動作の困難
  • 進行すると手の甲の筋萎縮がみられる
  • 血管圧迫により腕が白くなったり青紫色になることがある

反復性肩関節脱臼
(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)

反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)

肩関節は上腕骨が大きく動ける構造のため、受け皿である関節窩が小さく、不安定になりやすくなります。転倒時に手をついたり、強い外力が加わると脱臼しやすく、関節唇や靭帯が損傷すると反復性脱臼につながります。特に若年者では再発率が高いのが特徴です。

診断

  • レントゲンで骨欠損の評価
  • MRI関節造影で関節唇や軟部組織の損傷を確認
  • 問診により脱臼の頻度や不安感を評価

症状

  • 肩を動かす際の脱臼や不安感
  • 肩の痛みや可動域の制限
  • 関節のゆるみや筋力低下

06-6320-7836